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個別半導体他

1940年代

1947年12月米国ベル研究所(BTL:Bell Telephone Laboratories)で、点接触型の トランジスタが発明され、さらに1949年4月には同研究所でゲルマニウム合金型 トランジスタが、続いて1951年に成長接合型トランジスタが開発され、その後の 半導体発展の礎となった。

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1950年代

電気通信研究所の岩瀬 新午、浅川 俊史は、日本で初めて点接触トランジスタの増幅動作に成功し、11月に物理学会年会で発表。

1954年1月神戸工業より合金接合型のゲルマニウムトランジスタが発売され、同年7月にはソニーから成長接合型ゲルマニウムトランジスタが発売された。 その他の日本各社も1950年代後半からゲルマニウムトランジスタの量産を開始し、50年代末には日本の生産量は世界トップとなった。

ソニーの江崎玲於奈は半導体pn接合ダイオードで、量子論上予測されていた電子のトンネル現象を発見、1973年ノーベル物理学賞を受賞した。 このダイオードは電流-電圧特性に負性抵抗を持ち、超高周波増幅や超高速論理回路素子として活用された。

Fairchild のJ.A. Hoerniは、不純物選択拡散に用いたシリコン酸化膜を除去しないで、接合の保護膜、配線の絶縁膜に使用する、ダイオード、トランジスタの製作方法を発明し、プレーナ・プロセスと名づけた。その後の集積回路発展の基礎になる重要な発明である。


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1960年代

BTLのJ.AttalaとD.KahngはSi単結晶表面に成長させた酸化膜をゲート絶縁膜に用いる、今日のMOSFETの原型を考案し、世界で初めてその安定動作に成功した。

日立の大野らは、酸化膜中の可動イオンのMOSFET特性への影響を低減できるB-T 処理技術を発明した。この結果、Si(100)面をチャネルとするMOSFETが、Si基板と酸化膜の界面の固定電荷、界面準位の影響が最も少ないことを実証した。 以後、ほとんどのLSIはSi(100)面を用いることになる。

1963 IEEE ISSCCで、FairchildのF. M. Wanlassは相補型MOS (CMOS) の基本概念を発表、スタンバイ電力が小さく、高集積化に適していることを予見した。

高周波バイポーラトランジスタの高出力化には、単位面積当たりのエミッタ周囲長を長くすることが有利になることから、 エミッタ拡散層をメッシュ状に配置するトランジスタが考案された。UHF帯で出力数10Wのトランジスタが開発され、全固体TVサテライト装置で活躍した。

DSA(Diffusion Self Aligned) MOS FETはn型Si基板表面の拡散窓からp型、n型不純物を2重拡散してnpn構造を作製し、p層の表面に接する領域をMOSFETのチャネルに使用する。 チャネル長が不純物の拡散で決まるので、リソグラフィで加工するより短いチャレル長を実現できる。短チャネルMOSFETとして期待されたが、むしろ高耐圧化に適していることから電力用MOSFET として発展する。


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1970年代

BTL(Bell Telephone Laboratory)の林らは、GaAs/AlGaAsダブルヘテロ構造レーザを考案し、室温CWレーザ動作に成功した。 CorningはKaoが発明した低損失石英光ファイバの販売を開始した。光通信の光源と媒体の同時出現により光通信発展が始まる。

1966年にC.A.Mead が提案したGaAs MESFETは、GaAsの電子移動度がSiより数倍高く、半絶縁性基板が出来ることなどから、 高周波トランジスタとして有望視され、世界で30社以上が開発を進めた。NECは優れた結晶成長、電極形成技術を開発し、 マイクロ波帯無線通信向低雑音GaAs MESFETを世界に先駆けて商品化した。

UHF帯高出力増幅にはSiバイポーラトランジスタが使われていた。富士通の森田らは、ゲート長5μm(ゲート幅20mm)のAlゲートnMOSFETで、 周波数700MHzで、出力16W、利得6dB(@700MHz)を達成し、世界に先駆けて、MOSFETのUHF帯、マイクロ波帯での優位性を実証した。

1950年東北大・西澤によって発明された静電誘導トランジスタ(SIT: Static Induction Transistor)の三極管特性を活かしたオーディオ増幅用SITが開発された。 これを使用したオーディオ増幅器B-1(150W出力)が発売された。

GaAs MESFETの高周波高出力性能に注目した富士通は、ソース接地方法、電極形成法に特長のあるマイクロ波帯高出力GaAs MESFETを世界で初めて商品化した。 これによりC, Xバンドのマイクロ波中継装置に従来使用されていた進行波管(TWT)をリプレイスし、世界初全固体マイクロ波中継装置が実現した。1989年には衛星通信の 増幅器にも採用されるなど、マイクロ波帯で現在でも広く使われている。

MOSFETの電流駆動能力を向上させるために、チップを貫通させる、いわゆる縦型構造を有し、さらに周波数特性を改善したメッシュゲート構造を組み合わせた縦型メッシュゲート構造パワーMOSFETが提示された。このパワーMOSFETの出現は、その後のMOS系パワーデバイスの基礎となっている。

イメージセンサ用のフォトダイオードは、1980年前後に大幅な改良開発が進められ、1990年代以降のほとんどのCCD、CMOSイメージセンサに採用されるようになったピン留めフォトダイオードが誕生した。

1970年に室温CW発振に成功した半導体レーザーは、非常に短命で発振モードが不安定という欠点があった。劣化原因の解明と対策技術開発、発振モード安定化構造(CSP型、 BH型:日立、TJS型:三菱電機)発案により、世界で初めて半導体レーザーの市販を始めた。

撮像管の置き換えを狙ったCCD撮像素子の開発が1975年頃から活発化するが、ソニーは世界に先駆けて、2/3型、11万画素(242H×490V)のCCD撮像素子(ICX008)を商品化した。 1980年には、これを使用した2チップカラーカメラ(XC-1)を発売した。

石英ファイバーは発売当初は波長850nm付近が低損失であったが、ファイバーの技術が進み石英の純度が向上すると、最初は1310nm、ついで1550nmで損失が最小になること がわかってきた。このため各社いっせいにInGaAsP/InP系レーザーの開発に着手し、1976年に東工大・NTTが連続動作に成功する。その後、各社いっせいに低しきい値1.3μm帯InGaAsP/InP系レーザーの開発に成功し、 1983年12月のF-400M(NTT)の運用開始につながる。

1979年12月に富士通(研)三村高志によって発明された、半導体ヘテロ接合界面の2次元電子ガスをチャネルにもちいる電界効果トランジスタである。高速・高周波動作に優れ、 1985年に国立天文台電波望遠鏡の低雑音受信機に採用されたのを商用化の第一歩として、現在では衛星放送、移動無線などマイクロ波・ミリ波通信分野の重要デバイスになっていると同時に、この発明が契機になって、 各種半導体ヘテロ接合の重要性を認識させた功績も大きい。

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1980年代

世界に先駆けて商用水準(4-6kV-1500A)の、LEDからの光信号でターンオンする光トリガサイリスタ(LTT: Light-Triggered Thyristor)を開発、 これを使用した高電圧電力変換装置の実用化試験に成功した。

光ファイバの最低損失波長1.55μm付近で、高速変調をかけても単一縦モード発振(動的単一モード)を維持できる、InGaAsP/InP DFB (Distributed Feedback:分布帰還)型BH (Buried-Hetero-Structure:埋め込みヘテロ構造)レーザーの開発に世界に先駆けて成功した。

当初GaAs/AlGaAsレーザーはすぐに劣化する課題があったが、シャープはp型GaAs基板を使用するVSIS(V-channel Substrate Inner Stripe)構造レーザーを開発し、約4万時間 の製品寿命を達成、家庭用CDプレーヤ(ソニー・Philips)の商品化が可能になった。

1984年12月東芝は、MOSFETの構造を工夫することで、耐圧1200V、電流容量75AのラッチアップフリーのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を開発した。 寄生サイリスタのラッチアップ抑制は不可能と考えられていた従来概念を打破した。

松下電子の上田らは、断面がU字形状のグルーブ(溝)の側面にチャネルを形成するパワーMOSFETを考案し、VMOSFET, DMOSFETよりもオン抵抗の低いスイッチング 素子を実現できることを実証した。この構造は比較的低い耐圧のパワーMOSFETに、現在(2010年)でも大々的に使用されている。

HEMTは当初高速論理素子として大いに期待され、スーパコンに向けて16KSRAMなどが開発された。しかしHEMTはマイクロ波、ミリ波帯での超低雑音特性に優位性のある ことが実証され、衛星放送受信アンテナ用低雑音HEMTが開発発売された。衛星TV時代の幕開けとともにHEMTは大々的に使用され、ベルリンの壁崩壊の一因になったとも言われる。

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1990年代

CCD撮像素子は画素感度を維持しながら、画素サイズを20年間で1/100に縮小した。オンチップカラーフィルタ、オンチップマイクロレンズ、タングステン遮光などの技術が開発 され、HDTVカムコーダに対応できる撮像素子が開発された。現在(2010年)では1200万画素CCD撮像素子が開発されている。

1993年12月 日亜化学・中村の発明したツーフローMOCVD技術によるGaN およびInGaN単結晶薄膜、ならびに熱アニール法によるp型GaN結晶で作成したダブルヘテロ構造LEDで発光効率2.7%(従来比100倍)の高輝度青色LEDの開発に成功、日亜化学は世界で初めて1cd以上の光度を有する波長450nmの青色LEDを製品化した。

GaAs基板にエピ成長可能なAlGaInP系材料による赤外レーザーの室温連続発振に。1985年にNEC、ソニー、東芝が成功、650nm帯レーザーの幕開けとなった。 松下のHDSA構造レーザーなど各社で、実用化に向けてのレーザー開発が進み、1996年商用開始の家庭用DVDの光源にもちいられた。

デンソーはブロードストライプ(発光幅360μm)構造AlGaAs/GaAs高出力半導体レーザーを開発、これを使用したレーザーレーダーを、1997年発売の乗用車のACC (Adaptive Cruse Control:車間距離制御)システムに搭載した。

富士電機の藤平らは、ドリフト層に低濃度n層の代わりに、n型層とp型層を交互に並べるスーパージャンクション(SJ)構造を採用する縦型MOSFET を考案した。 n層の濃度を上げても高耐圧が得られるので、オン抵抗をさげることが出来、高耐圧(電源用)パワーMOSFETの主要な構造になった。

パイオニアは世界に先駆けて、有機ELドットマトリックスディスプレイを表示部に採用した、車載用FM文字多重レシーバー「GD-F1」を発売した。ディスプレイは、緑単色で、256×64画素、表示エリアは94.7mm×21.1mm、画素サイズ0.32mm×0.29mmのパッシブマトリックス構造である。輝度100cd/㎡、素子寿命10,000時間以上を実現している。

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2000年代

2000年7月東芝は、トレンチ形IGBTを改良し、エミッタ側の電子注入量を増加させ、高耐圧と低オン電圧を実現した。この結果、従来のGTOを使用してきた分野がIEGTに置き換わった。

1977年に東工大・伊賀により提案され、1988年に赤色で、1993年に1.3μ帯で室温連続動作に成功していた面発光レーザーは、製造工程の複雑さから実用化が遅れていた。 2002年6月富士ゼロックスにて、プラスチック光ファイバ伝送に適した、波長850nm、出力4mWの10ギガ・イーサネット対応レーザーが商品化された。

GaN系半導体材料は、高温動作、高耐圧、高出力トランジスタとして期待が大きい。 HEMT構造にすることで電子移動度も高くなり高周波領域での動作も可能になる。モーター駆動や電源回路に用いるパワートランジスタとしても開発が進んでいる。

2002年2月に策定された大容量光ディスク「Blue-Ray」に向けて各社レーザー開発を 進めるが、三洋電機は他社に先駆けて波長405nm、パルス光出力100mWのGaN系 大出力レーザー開発に成功した。

富士通は、76GHz車載レーダー用InGaP/InGaAs HEMT MMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuits)を開発した。これを使用した富士通テンの、世界初の前側方監視ミリ波レーダが、クラウンマジェスタに搭載された。

視感度の高い黄色を蛍光する蛍光体と青色発光ダイオードを組み合わせる白色発光ダイオードは1966年に提案された。青色発光ダイオードの進歩で、日亜化学は2006年6月に100lm/W白色LEDサンプルを出荷し、蛍光灯に匹敵する明るさを実現した。現在、日亜化学が世界の6割の白色LEDチップの製造を行っている。

有機 EL ディスプレイは、自発光、高速応答、薄型、低電圧駆動、高コントラストなど、液晶ディスプレイ(LCD)をしのぐ特徴を持っている。これまで車載ディスプレイや携帯機器用ディスプレイとして使われてきた。ソニーは世界で初めて 2007年12月1日に 11V型有機テレビ(XEL-1)を発売、有機 EL ディスプレイのテレビ用途の先鞭をつけた。

CMOS撮像素子はCMOS論理回路とモノリシック集積が可能なため、携帯電話搭載撮像素子など、小型で安価なものに使われてきた。パターン雑音、スイッチ雑音を低減する技術が開発され、CMOS撮像素子の低消費電力、高速動作を活かした大画面撮像素子が開発され、デジタル一眼レフカメラに採用された。

1982年東大荒川、榊が提案し1994年に動作確認されていた量子ドットレーザーは、従来型半導体レーザーに比べて温度変化の影響が少なく、100℃まで複雑な温度調整なしに安定動作する。量子ドット作成技術が進歩し、2009年3月に世界で初めて1310nm、10Gbps通信用量子ドットレーザーの商品化に成功した。

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2010年代

CMOSイメージセンサーは、携帯電話の普及により市場規模が急速に拡大した。新機能追加や高速化・低消費電力化を実現するため、 画素とロジック回路を別々の基板で作製し、基板同士を上下に積層した3次元積層型のCMOSイメージセンサーを開発した。

住友電工が2013年に100Gb/sデジタルコヒーレント通信用光源として製品化したフルバンド波長可変レーザーは、独自のCSG-DR(Chirped-Sampled-Grating Distributed Reflector)構造と集積ヒーターによる局所的な熱制御で、光ファイバー出力+16 dBm以上の高出力特性と200kHz以下の狭線幅特性を両立した。スペクトル利用効率向上による今後の光ネットワークの更なる大容量化に向けて、重要なマイルストーンとなった。

三菱電機は2013年に3.3kV SiC-MOSFETを開発し発表した。2014年に3.3kV SiC-MOSFETとSiC-SBDを搭載した3.3kV/1.5kAフルSiCパワーモジュールを開発し、世界で初めて鉄道車両用インバーターに搭載して製品化を実現した。

1962年にHolonyak Jr.が開発に成功した赤色発光ダイオード(LED)は、種々の化合物半導体結晶技術の開発により、発光波長領域は大幅に拡大し、発光輝度が向上した。1995年頃には、5000cd/m2以上の輝度の、フルカラー表示に必要な光3原色(赤、緑、青:RGB)のLEDが開発され、大型フルカラーLEDディスプレイが実現した。2010年代になると、幅100mを超える超大型野外LEDパネルディスプレイが設置されるようになった。

シチズン電子は、青色LED素子や蛍光体材料の改良に加えて、熱伝導率の高いアルミニウム基板にLED素子を直接マウントする独自のパーケージ技術により、1kW級水銀灯と同等の全光束量(6-8万lm)を数百Wの投入電力で実現する高光束・高効率白色LEDを世界に先駆けて開発、製品化した。従来、水銀灯やハロゲンランプが使用されていたスタジアムや舞台の照明など、屋内外の大型照明装置に採用されている。

スマートフォンの急速な普及と共に、CMOSイメージセンサー(CIS)は市場を拡大してきた。2012年より出荷開始された、画素とロジック回路を積層した2層積層型CISにより、画素特性向上、ゲート規模増大、カメラモジュールの小型化を実現した。2017年、更にDRAMを積層した3層積層型のCISを開発し、ローリングシャッター歪の低減やSuper SlowMotion等の新たな機能搭載を実現することができた。


2020年代

ソニーは2020年5月に、裏面照射型InGaAsフォトダイオードアレイ(1280x1024画素、5㎛ピッチ)チップを、CMOS読み出し回路を形成したSiチップに載せ、チップ間の電極をそれぞれの積層面に形成したCu端子で直接接続する、可視-近波長赤外光(波長0.4-1.7㎛)の撮像が可能な小型(1/2型)イメージセンサーを商品化した。

キヤノンは、double-resonant-tunneling-diode patch-antennaを、6×6(36)個モノリシック集積し、全アンテナを同期動作させて、周波数450GHzで発振出力が約12mWのテラヘルツ波発振デバイスを開発した。

ソニーは、車載LiDAR向けSPAD直接ToF(Direct Time of Flight)方式距離センサーを商品化した。裏面照射型SPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素チップと、信号処理回路などを搭載したロジックチップを、Cu-Cu(カッパーカッパー)接続で積層し、光の入射面にマイクロレンズと凹凸を設けて入射光吸収率を高め、波長905nmの光に対して24%の高い光子検出効率(Photon Detective Efficiency: PDE)を実現した。200mの遠距離から近距離までを、15cm間隔で高精度かつ高速に測距できる。


【最終変更バージョン】
2023/9/5