1970年
半導体レーザLD室温CW動作成功(BTL)
光ファイバ実用化(Corning)
〜個別半導体・他〜


GaAs p-n接合での電子注入レーザ発振は、1962年頃からいくつかのグループで確認され、光通信の光源として期待された。しかし、発振しきい電流値が100kA/cm2と高く、動作は液体温度(77K)でのパルス動作に限られており、しきい値電流を下げて室温CW動作を達成することが大きな課題であった。

しきい値を下げるには注入電子を活性領域に閉じ込めることが重要であることがだんだんわかってきた。1963年にKroemerは、p-n接合よりもヘテロ接合をもちいる方が電子閉じ込め効果が期待できることを発見し、ダブルヘテロ(DH)構造レーザを提案した。

BTL(Bell Telephone Laboratory)の林らはこのDHレーザの実現に取り組んだが、当時のGaAsエピ結晶成長は液相(LPE:Liquid Phase Epitaxial)法が唯一で、厚さ1μm程度のGaAs活性層の両側をp型AlGaAs層とn型のAlGaAs層で挟む構造を作ることは容易ではなかった。BTLのPanishはスライデング・ボート法を考案し、DHレーザの試作に成功した。しきい値電流は2.5 kA/cm2に下がり、室温CW動作を世界で初めて達成した。

光ファイバの本格的な研究は1960年代前半に始まったが、当時は減衰量が大きくて実用化には至らなかった。ファイバを細くしてシングルモード伝送を行う、あるいは屈折率をファイバの中心方向に連続的に変化させるなど、多くの人によって様々な改良が加えられたが、光の減衰量を下げるための根本的な解決には至らなかった。CorningのKaoは、光ファイバの物理現象だけでなく材料にも着目し、光の減衰の原因は材料に含まれる鉄などの微量の不純物による吸収や散乱であることを1966年に明らかにし、これらを取り除くと減衰量が大幅に改善されると予測した。さらにほかの研究者とともに様々なガラス材料で光の減衰量を測定し、溶融石英が最も適切な材料であることも示した。4年後の1970年に、CorningはCVD法で作製された溶融石英光ファイバを商品化した。これを機に光ファイバの改良と実用化は急速に進展し、既に地球上に張り巡らされた総延長は地球全周の2万5千倍以上に達する。


図1 Panishの考案したスレイディング・ボート法のメモとボートの写真1)


図2 林がDH構造がレーザー動作に有用なことを説明した図1)

【参考文献】
(1) I. Hayashi, “Htetrostructure lasers”, IEEE Trans. on Electron Devices, Vol. ED-31, pp. 1630-1642, (Nov. 1984)
(2) “科学技術動向 No. 103”,文部科学省 科学技術政策研究所 
  http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt103j/0910_04_nobel/200910_nobelprize.html

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【最終変更バージョン】
rev.001 2013/5/9