1960年代中期
電卓用ICの量産開始

〜集積回路〜



世界初のオール・トランジスタ電卓が1964年にシャープから発売されてから、各社ともその軽量化、低価格化、低消費電力化を目指して新しい半導体デバイスの採用を積極的に進めた。66年10月にはシャープから一部にバイポーラICを使ったIC電卓(CS-31A)が発売され、一号機に比べて重量、部分点数を半減。売価は35万円(一号機は53.5万円)と大幅に低減された。この機種には三菱電機製の28個のバイポーラICが使われていた。

この当時、業界では「バイポーラか? MOSか?」の議論が盛んであった。MOSは信頼性の点で不安が残っていたものの集積度や消費電力の点で優位性があり、電卓メーカーの指向と合致したため、次第に勢いを増していった。量産化が進むとともに、MOSの信頼性問題も解決されていった。

シャープは67年12月、MOSICを使った「オールIC電卓(CS-16A)」を発売。初号機に比べて部品点数は15分の1、容積は3分の1、重量は6分の1を達成し、価格も半値以下の23万円を実現した。この機種には日立のMOSICが56個使われていた。電卓は日本におけるMOSデバイスの量産を牽引する強力な市場となった。

添付の写真は日立製作所のMOS IC(HD701)のチップ写真とパッケージ写真である。HD701は16ビット・シフトレジスタであり、1ビットは3MOSで構成され、素子数は全部で55個。ゲート長は15ミクロンであった。また、10ピンのTO-5型パッケージが使われた。

これに続いてMOSの集積度は年毎に上がっていき、68年にはMSI、69年にはLSI、72年にはワンチップLSIと新デバイスが登場し、電卓の価格性能比を飛躍的に改善する原動力となった。

電卓用MOSIC(HD701:16ビット・シフトレジスタ)
(提供:日立)

電卓用MOS IC(HD701のパッケージ:10ピンのTO-5型パッケージ)
(提供: 日立)


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.002 2010/10/23