1990年
SoCの発展

〜集積回路〜



SoC(System-On-a-Chip)は、LSI技術の発展と共に登場したLSIである。1970年代、CPU機能を1チップに集積したマイクロプロセッサが登場した当時は、メモリ、入出力回路などは、各々別個のパッケージに搭載され、コンピュータシステムを構成する際は、それら複数個のパッケージがプリント基板上に配置され、互いに接続されて使われていた。

1980年に入ると、半導体製造技術の進歩により、上記複数個のLSIを1個のLSIに集積化することが可能となり、マイクロコントローラと呼ばれた。さらに、より高い処理能力、あるいは特殊な性能が求められる用途に対しては、高性能の単体マイクロプロセッサ、あるいは目的に応じた専用回路をマイクロコントローラに付加するなどして、ASIC (Application Specific Integrated Circuit)あるいはカスタムICと呼ばれる、高付加価値商品群が生み出された。しかし、その対象分野が多様化してくると、生産量が少ないにも拘らず、多種類のASICを開発する必要が生じ、コスト的な不利益が顕著となった。

そこで、さらに集積化技術が進んだ90年代中頃からは、メモリ、各種バス、グラフィックスなどのコントローラをCPUとともにすべて搭載しておき、利用する目的により機能を選択することのできるSoCが登場した。SoCは、同一品種を大量生産することによる低コスト化のメリットが認識され、2000年以降、急速に発展した。この発展を支えたのは、先に述べた微細化による集積化技術の進展と共に、ハードウェア記述言語を用いEDAツールを使った設計方法による設計効率の向上である。半導体プロセスに近いレベルの設計と、機能レベルの設計が有効に分離され、また、それまで公開されていなかった基本回路のIPが広く流布するようになった。

1チップに高度なシステム機能を搭載するメリットは、1)占有面積の削減によるシステムの小型化、2)リード線、パッドなどのインピーダンスに因る信号遅延がない、3)小型化に伴うシステム全体の低消費電力化、4)部品点数の削減、実装・テスト工程省略によるコスト削減、などである。今後、SoCにさらにセンサーなど、様々な機能デバイスが取り込まれることを考えると、これらを1チップで構成しようとするSoCと、あくまで別チップで構成して低コストでアセンブリするSiP(System In Package)技術と、どちらが有利かは常に議論となる。

SoCの対象となる製品は、携帯電話、デジタルTV、デジタルカメラ、DVDレコーダ、デジタルオーディオ・ビデオ、など多岐に亘る。この意味で、これからのデジタル情報家電時代のキーデバイスと言える。また、システムLSIは、SoCとほぼ同じ意味の言葉として用いられる。


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.001 2015/6/16