アモルファスの太陽電池利用

 
アモルファスシリコン太陽電池パネルを搭載した桑野氏宅

 アモルファス半導体の国産技術では、三洋電機のアモルファスシリコン太陽電池が話題になった。その開発を一身に担ったのが、長らく同社研究部門で活躍し、後に社長に昇りつめた桑野幸徳氏である。
 同氏は1963年に入社すると直ちに中央研究所に配属され、「好きなことをやれ」といわれたが右も左もわからない。取り組んだのが、大学で手がけていた放電の研究で、まずシランと窒素を混ぜて真空の反応容器中でグロー放電させて窒化シリコンをつくった。これが実はアモルファス物質で、それ以後の研究生活のメインテーマになる。
 以後、アモルファス材料の研究に没頭するが、思うような成果が出ない。もう止めようかと思っていたところに中央研究所長の山野大氏から声がかかった。
 「これからはエネルギーの時代やで。君は電子部品用の材料として見てきたが、エネルギー材料として見直してみたらどうか」
 折よく、図書館で見た英国の研究者の論文に「シランガスをグロー放電分解して形成したアモルファスシリコンは、不純物を添加することで価電子制御ができる」とあった。この論文に衝撃を受けた桑野氏は直ちに実験を開始したが、そのうち一足早く米RCAグループによる太陽電池開発成功の報が伝わった。
 これを知った山野所長は、またもや「素子づくりで先を越されたのなら、工業化で世界に先駆けろ」と桑野氏に発破をかけ、そんななかから同社の特許にもなった「集積型」のアイデアが生まれた。
 写真は自らが開発したアモルファスシリコン太陽電池パネルを搭載した桑野氏宅。「桑野太陽光発電所」の看板が下がっている。    (桑野幸徳氏提供)

第V部 おわり

| 前の記事へ戻る |  | トップに戻る | |第V部一覧へ