「半導体化」電卓のハシリ

 
シャープ(当時の早川電機工業)が64年に発表した「コンペットCS-10A」

 日本の半導体市場を下支えした応用製品に電卓がある。1965年にたった4,300台ばかりだった電卓生産は、史上最高を記録した80年には6,000万台に上り、メーカー数も50社前後に達している。トランジスタ時代からIC、LSI時代を通じて、電卓需要がわが国半導体産業の成長のバネになってきたことは間違いない。
 電卓の淵源には諸説あるが、筆者の知るところ、英国のサムロック・コンプトメーター社が1962年に製品化した「アニタ・マーク8」ではないか。従来のリレー式計算機と違って真空管を使っているから、その限りで電子式卓上計算機だが、見栄えも性能も今日の電卓のイメージとはかけ離れたものになっている。
 その点、シャープ(当時の早川電機工業)が64年に発表した「コンペットCS-10A」は演算素子として全面的にゲルマニウム半導体素子を採用、その数もトランジスタ350個、ダイオード2,300個に上っている。
 電卓本体の大きさは幅42cm、奥行き44cm、高さ25cmに及び、重量も25kgと軽薄短小化未だしの感が深いが、シャープはこの製品の開発を足場にして、次々と小型・薄型化、低消費電力化、液晶表示化などを図り、電卓を日本のオハコ製品に育て上げた。
 同社は、これら一連の電卓開発で2005年にIEEEから「マイルストーン」の認定を受けている。   (シャープ提供)

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