2ヵ月間の「モノリシック・アイディア」

 
写真A 「つくば万博」に出展されたKilby 氏発明のIC


写真B チップの拡大写真

 [過去四半世紀にわたるこの産業の発展は、自分の予想を超えてエキサイティングでドラマティックなものだった]
1985年、つくば科学万博に自ら発明したICを出展するため来日したJ.Kilby氏は2mもあろうかという長躯を椅子に沈めて、私のインタビューに答えた。
 Kilby氏の話で面白かったのは、「モノリシック・アイデア」、すなわち1個の半導体チップのなかに複数の素子を詰め込む着想を得てから実現するまでの期間は、2カ月程度のほんの短期間だったということだ。 1958年5月、電子部品メーカーのCentralabから新進の半導体メーカーTexas Instruments (TI)社に入社した氏は、新米社員であったため7月初めの大型休暇を取る資格がなく、ひとり工場で集積化部品の構想を練っていた。
 ある日、ふと着想したのが、「部品のすべてが1種類の材料でつくられるならば、それらはまた完全な回路を形成するために内部接続され、すべてを一体化できる」と考えた。いわゆるモノリシック・アイデアである。
 Kilby 氏による最初のICは、幅約4mm、長さ約9mmのゲルマニウム基板上に5個の素子を集積した移相発振器だった。完成したのが9月12日。
 さらに氏は翌59年初めにフリップフロップ回路の最初の動作ユニットを完成、同年3月のIREショー(後のIEEEショー)に「ソリッド・サーキット(固体回路)」と名づけて出品している。
写真Aは「つくば万博」に出展されたKilby 氏発明のIC、写真Bはチップの拡大写真。   (日本TI提供)

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