室温連続発振レーザーに賭ける

 
写真A 林氏らがこの成果を確認したことを示す研究ノート


写真B  林氏らの快挙を報じた「BELL LABS News」1970年9月4日号(拡大可能)

 2000年のノーベル物理学賞受賞者の一人にロシアのZhores I. Alferovがいる。1970年にガリウム・ヒ素とガリウム・アルミ・ヒ素の2種の薄膜を使って室温連続発振する半導体レーザーを開発した功績が認められた。
 ところが、まったく同時期に同じ成果を上げていた日本人研究者がいた。米ベル電話研究所の林厳雄氏である。
 氏は63年に渡米、MITを経て64年にベル研入りを果たしている。間もなくJohn Galt氏率いる固体電子研究部門デバイス研究室で半導体レーザーの研究に着手している。当時のガリウム・ヒ素による半導体レーザーでは、レーザー発振に必要な閾値電流密度が1cm2当たり3万Aにも達し、発熱ですぐに壊れた。
 光を効率よく出し、熱の問題を解消するためには、ガリウム・ヒ素とガリウム・アルミ・ヒ素接合による二重ヘテロ構造が有効らしいことを突き止め、特に「きれいな接合」の作製に注力した。
 結晶の作成には液相成長法を用いたが、これには同僚の化学者、Morton Panish氏が貢献した。閾値電流密度は1000Aまで下げた。
 林氏らがこの成果を確認したのは、1970年6月1日の早朝。月曜日だったが、戦没将兵記念日のため休日。研究ノートには写真Aに見るように、日付、時間とともに「24℃で連続発振を確認」とある。
 写真Bは林氏らの快挙を報じた「BELL LABS News」1970年9月4日号。左側が林氏、右側がPanish氏。
(林厳雄氏提供)

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