Bardeen博士の通研訪問

 
John Bardeen博士を取り巻く通研の研究陣

 日本のトランジスタ研究をリードした電気通信研究所をトランジスタ発明者の一人、John Bardeen博士が見学に訪問したのは、1953年のことだ。この年には国際理論物理学会が日本で開催され、同学会に参加した氏がこれを機に同所に立ち寄ったものだ。この学会には世界でも一流の固体物理研究者が参集し、日本の研究者たちが国際社会の仲間入りを果たした記念すべき年だった。写真には博士を取り巻くようにして同研究所の研究陣が目を凝らしている。
 その一人である前出の浅川俊文氏が後年、こんな“秘話”を漏らしている。
「(博士には)通研製の接合型トランジスタの特性を通研製のカーブトレーサーで見せた。当時、通研の接合型トランジスタの電流増加率は0.6〜0.8程度でトランジスタとは言い難い代物だったが、カーブトレーサーの利得を調整し0.99程度にして見せたので、目を丸くして食い入るようにして見ていた。若気の至りとはいえ、悪いことをしたものだと思っている」(西澤・大内共編『日本の半導体開発』)(浅川俊文氏提供)

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