1969年
電卓による日本LSI産業の拡大

~業界動向~


1945年のENIACに始まるコンピュータの登場以後も、会計処理などに使う機械式計算機は依然として広く使われていた。これを1961年にBell Pinch(英国)が真空管式の計算機にしたのが電卓の始まりとされる。この電卓を1964年にシャープ・Sony・キャノンがトランジスタ化し[1]、さらに1966年にはシャープが初のIC電卓を発表して[2]、業務用の電卓市場が日本企業主導によって拓けてきた。1967年にはTIによるポケット電卓の提案もなされ、日本の電卓メーカは個人用電卓による市場拡大を図った。その皮切りとなったのが1969年に発売されたシャープの初のLSI電卓QT-8Dである[3]。続いて1970年代初めにはキャノンとビジコンからポケット電卓が発売された。

この3社の電卓用半導体はPMOS-LSIであり、シャープはRockwell, キャノンはTI、ビジコンはMOSTEKに生産委託したものである(TIとMOSTEKはワンチップLSI)。日本の半導体メーカは電卓のトランジスタ化とIC化には参与したものの、LSI化には慎重であったためとされる。これらLSI電卓の成功により、日立が1970年にシャープ向けの生産を開始したのをはじめとして日本の半導体メーカ各社が電卓向けLSIの生産に参入し、TIと共に電卓用LSIの主要サプライヤとなった。1972年にはシャープ向けに東芝からCMOSワンチップLSIが開発された[4]。このように日本の電卓メーカの主導した電卓市場の拡大によって、1970年代初頭の日本のLSI生産の約40%を電卓用LSIが占め、日本の半導体産業を牽引した。


【参考文献】

  1. 日本半導体歴史館 応用製品 1964年3月 日本初の電子式卓上計算機の発売(シャープ)
    https://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi210.html
  2. 日本半導体歴史館 集積回路 1960年代中期 電卓用ICの量産開始
    https://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi720.htm
  3. 日本半導体歴史館 集積回路 1969年 電卓用PMOS LSIの生産開始 (米国North American Rockwell)
    https://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi722.htm
  4. 日本半導体歴史館 集積回路 1972~1973年 電卓用CMOS LSIの製品化(シャープ、東芝)
    https://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi707.htm


Ver.001: 2026/2/1