1980年代

g線縮小投影露光装置

〜装置・材料/リソグラフィ〜


縮小投影露光(ステッパー)方式は1978年にGCAから発表され(DSW4800)、同年ニコンからも超LSI研究組合にステッパー(VL-SR2)が納入された。 (1) 1980年にはニコンから解像度1μmのステッパー(NSR-1010G)が商用化された(図1)。いずれもg線を用いた縮小率が10:1のステッパーであり、それまでのプロジェクション露光方式に比べて欠陥密度の低減に格段の効果があった。一方で、ステップ・アンド・リピート方式であるためにプロジェクション露光方式に比して生産性が低く、量産用露光装置としての適用は限定的であった。また1μm以下のサブミクロン領域の解像度の実現には課題が多かった。そのためステッパーはX線露光やEB露光方式へ移行する間の繋ぎのリソグラフィ技術と位置付けられていた。

1981年、ニコンは縮小率を5:1とし且つ露光領域を15mm×15mmに拡大した光学系を開発し、生産性を大幅に向上させたg線ステッパー(NSR-1505G, NA=0.3、解像度1.2μm)を開発、発売した。それまでの縮小率10:1で露光領域10mm×10mmのステッパーに比べてスループットが3倍近く高く、1.3μm世代の量産用ステッパーとして適用されるようになった。GCAは1983年に5:1ステッパー(6300DSW)を発売、キャノンも1984年に5:1ステッパー(FPA-1500)を発売した。5:1の縮小率はステッパー方式の標準技術となると同時に、光学系の追究による光方式の解像度向上の道筋が開かれた。

光リソグラフィの解像度はλ/NA(λ:光の波長、NA:開口数)に比例するので、サブミクロン領域の解像度の実現には光の短波長化か高NA化(あるいはその双方)が必要となる。ただし短波長化にはそれに対応するフォトレジストの高感度化が必要であり、0.8μm世代に向けてはニコンやキャノンの日本企業を中心にして露光領域を15mm×15mmに保つ高NA化が進められた。1986年にキャノンからNA=0,43、解像度0.8μmのg線ステッパー(FPA-1550MU)が、1987年にはニコンからNA=0,45、解像度0.75μmのg線ステッパー(NSR-1505G4D)が開発された。

ステッパーは高精度のレンズとレーザー干渉計を用いた高精度の自動位置合わせ機構が必要であり、ステッパーが標準になると年間数百台規模の量産技術が不可欠であった。 この両者を併せ持ったニコンとキャノンは70〜80%の世界シェアを占めるようになった。


図1 10:1ステッパー(NSR-1010G ニコン)
(ニコン提供)


【参考文献】
[1] 1970年代中頃:リソグラフィー技術がコンタクト露光方式からプロキシミティ露光方式へ移行
[2] 1970年代:プロキシミティ露光装置およびプロジェクション露光装置

 

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