1960年代
コンタクト方式リソグラフィ技術によるシリコンデバイスの製造
〜プロセス技術〜


1960年代になりプレーナ技術を使ってシリコントランジスタやシリコンICが製造されるようになった。プレーナ技術とは、シリコン表面に熱酸化によってSiO2薄膜を形成し、それに開口を開けてドーパントを拡散させることによってPN接合を形成する技術である。プレーナ技術を使うことにより特性の安定したトランジスタが製造できるようになり、またトランジスタを集積したICへと半導体が大きく発展していった。

プレーナ技術の基本をなすプロセス技術はフォトリソグラフィ(多くの場合は単にリソグラフィと呼ばれる)技術である。この技術は基本的には写真の焼付けと同じであり、マスクと呼ばれる原版(写真のネガに相当)を感光剤(フォトレジストと呼ばれる)を塗ったシリコン基板に密着して露光し、現像する。マスクをシリコン基板に密着させるのでこの方式をコンタクト方式のリソグラフィと呼ぶ(時代が進むにつれてマスクを密着させない技術が使われるようになったので、それと区別する意味でコンタクト方式リソグラフィと呼ぶ)。現像された感光剤は耐薬品性があり、シリコン基板を薬液に晒してエッチング(化学腐食)することによって、所望のパターンの開口やAl電極が形成される。リソグラフィ工程は何回か繰り返されるので、マスクは前のパターンに位置合わせをしてから露光する必要があり、このための装置をアライナーと呼ぶ。アライナーは基本的には光源と顕微鏡と位置合わせを行うX-Yステージで構成される。

日本メーカは当初、手作りのX-Yステージと顕微鏡を組み合わせてリソグラフィ工程を行っていたが、1965年に米国のKulick & Soffa社からそれらを一体化し位置合わせをし易くしたアライナーが発売されると、それを購入して量産を行うようになった。また感光剤は米国Kodak社のものを輸入して使用しており、この時代はまだ主要装置や材料を米国に依存していた。

尚、原版のマスクは、ガラス板に感光乳剤(emulsion)を塗布しこれにパターンを焼き付けて作られたのでエマルジョンマスクと呼ばれた。パターンの焼き付けは、Rubylith(ルビー紙)と呼ばれる赤いシートからパターンを切り抜き、これを縮小投影露光し、現像することによって行われた。

【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.001 2010/10/26