1990年代後半
ダマシン法によるCu配線技術の採用

〜プロセス技術〜



LSI開発当初より、ずっとAl系の材料が配線材料として使われてきたが、微細化が進むにつれて、配線抵抗が上昇し、RC(配線抵抗Rと浮遊容量Cの積)増加による信号線での信号遅延、電源線での電力損出がLSIの性能に影響し始めてきた。Cuは比抵抗がAlの3分の2以下と低抵抗であり、銀や金より安価なため、早くから次世代配線材料として着目されていた。また、配線の信頼性で重要なマイグレーション耐性が高く、許容電流密度で一桁近くAl配線より高いことより、AlからCuへの変更は自然な流れであった。

しかしながら、CuはRIEによるエッチングが難しく、これが、実用化の妨げとなっていた。ところが、80年代後半から実用化が進んだCMPの登場により、ダマシン技術との組み合わせで一気に実用化、量産化が進んだ。

ダマシン(damascene)とは象嵌のことであり、言葉のとおり、絶縁膜上の配線の形成予定部分に溝および穴をほって、その溝に金属(ここではCu)を埋め込む技術である。溝以外の部分についた金属は、CMPによって除去される。ダマシンにより、CuのRIEが不用になるほか、配線が形成できた時点で表面が完全に平坦になっていることは、配線の多層化を容易にし、10層以上の多層配線も可能となった。

配線材料、配線形成方法の変更は、設備ラインナップにも大きな影響を与えた。成膜においては、AlスパッタからCuスパッタやCuめっきに、加工においては、Al RIEから酸化膜RIEに、更に平坦化も、エッチバックからCMPへと移行した。さらに、スパッタ技術も、RIE配線では平坦部への膜形成のため面内均一性が主な課題であったが、ダマシン配線では、深い穴や細く深い溝の側壁に均一な膜の形成が必要であり、イオン化スパッタなど、大きな技術革新が進んだ。設備メーカーとしては、AMAT社、Novellus System社が有名である。国内メーカーとして、ULVAC社、TEL社が追随している。また、めっき技術は、Cuダマシンプロセスで初めて前工程に採用された。深い溝を埋め込むため、溝底からCu膜が優先的に成長するボトムアップを実現するため、めっき液の開発や、装置の開発が急ピッチで進められた。当初は、Novellus社、AMAT社、Semitool社、荏原製作所等が競合していたが、現在は、Novellus社が主流となっている。

ダマシン技術で先行したのはIBMである。1997年暮れのIEDMで0.25μmCMOSでの配線の試作に成功したことを発表した。また、IBMは、ほぼ同時期にCu多層配線MPUの製品出荷アナウンスを新聞発表し、これは、世界中の半導体メーカーに大きな影響を与えた。それ以降、半導体各社のCu配線への移行は急加速された。実際にCu配線が実用された製品として、1999年のPower PCは、有名である。日本国内では、IBMに一世代遅れた0.18μmCMOS世代以降、Cuダマシン配線の製品化が進められた。

【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.000 2010/10/26