1997年
ワンチップMPEG2エンコーダの開発(NEC)
〜集積回路〜



1995年にMPEG2(Moving Picture Experts Group 2)の規格標準化とともに、世界の半導体各社からMPEG2デコーダ用LSIが北米、欧州のSet Top Box用として量産出荷が始まった。NECでもμPD61020としてAVデコード機能を1チップに入れたLSIをSet Top Box用として出荷をおこなった。

また、日本ではDVDプレーヤの市場が同時期に立ち上がり、この市場向けにMPEG2デコーダLSIの開発が各社で進んだ。国内各社の次のターゲットはDVD記録レコーダ、デジタル記録VHSをいかに最初に開発するかにかかっており、そのキーのLSIがMPEG2エンコーダであった。

1995年当時のMPEG2エンコーダLSIは、まだ複数チップの組み合わせでしか実現できておらず、松下、三菱、C-Cubeなどが製品発表をおこなっていたが、民生分野で使えるものでは無かった。MPEG2エンコーダはLSIの回路規模がMPEG2デコーダの3倍以上もあったが、もし安価なLSIができれば民生分野での映像の記録装置が実現でき、大きなマーケットが生まれる可能性を信じて、各社でLSI開発の検討が開始された。

1997年、NECは世界で初めての1チップのMPEG2エンコーダLSI開発に成功し、2月のISSCCで発表した。NECではこの開発のためにNEC研究所と共同で開発PJを発足させ、放送機器で実現した高画質システムをいかに小さい回路規模にできるかの独自の動き検出回路と最適アルゴリズムを開発すると同時に、低ビットレートでの画像の高画質符号化を実現するためのアルゴリズム開発によりこのLSI化を実現した。

また、このLSI(μPD61050)を用いて1999年7月に世界初のデジタルVHSが日立から、12月には同じく世界初のDVD記録レコーダがパイオニアから発売されてMPEG2エンコーダを搭載した民生の本格レコーダ普及に大きく貢献した。

図1 MPEG2エンコーダLSI μPD61050 のチップ写真
(提供:ルネサスエレクトロニクス)

図2 MPEG2エンコーダLSI μPD61050 のパッケージ写真
(提供:ルネサスエレクトロニクス)


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.001 2010/10/16